(西原隆先生(愛媛県バドミントン協会指導強化部)
平成15年1月1日
近年トッププレイヤー傾向

近年トップ・プレイヤーのプレー傾向

 

最近のトップ・プレイヤーのプレー傾向をあらわすと、かつて以上に一段と「パワー化」「スピード化」「安定化」したと考えられます。

この要因としては、@ラケットの改善、Aシューズの改善、Bコート・サーフェスの改善等が考えられます。

 

まず、@のラケットの変化から見てみましょう。

ラケットの改善としては、「高反発化」「高強度化」「軽量化」「ロング化」「スィートエリアの拡大」等が上げられます。この事は、ラケットの操作性をより高め、スマッシュに代表されるアタック系のショットの増加(特に男子)、レシーブ力の向上を引き起こしています。このため最近の試合傾向は、ハイパワー戦、ラリー数の増加、試合時間の伸びが見られています。以前に増して、よりフィジカル面の向上が必要になってきているといえます。

 

さて、このような中で、ストローク技術はどのような傾向があるのでしょうか。

この傾向としてはより「コンパクト」で「スライス」テクニックを利用した、高度で多彩な「ディセプション」が出現している事です。この中には、グリップを指の中で操作し、握りこみを利用するという、今後重要な技術も含まれます。

オーバーヘッドストロークから見てみましょう。シャトルを上からスライス(左右の横ではない)して巻き込むようにスライスドショット(カット、リバースカット)を打つ技術が見られています。この打法だと、ネットを越えてから急速に失速し、落下していく軌道が見られます。

クリアーも同様にシャトルの上方をスライス(スライスドクリアー)して打っています。特に男子シングルスで多く見られ、速く軌道の低いクリアー(アタッククリアー)が多用されています。シャトルの軸回転をより強め、初速を速くして、リアコートで失速さすことを狙っているようです。また、この攻めに対して、チャンスがあればすかさずアタックを仕掛けていく。さながら俗に言うオールショートがお互いで繰り返す様相を呈しています。

 

次にアンダーハンドストロークを見てみましょう。ヘアピンの技術がより高まったことが上げられます。スピンやタンブラーに加えて、シャトルに軸回転を起こさす。低い位置から(腰の位置程度)でも前述の回転を加えていこうとするプレーがあります。

また、ロビングと見せかけてのヘアピン、スライス(カット、リバースカット)してのアタックロブ(ウイップ)等多彩な面を見せています。

特に最近、いわゆるユースエイジ(18歳〜22歳)のプレイヤーにこの傾向がよく見られています。男子で見ると、インドネシアのTaufik Hidayatや中国のChen Hong,Bao Chunlai,Lin Dan、マレーシアのHafis Hashim等が代表例でしょう。残念ながら日本ではこの種の技術指導は稀な状態です。今後のジュニア指導になんとしても、早急に注力するべき点でしょう。

 

ラケットの変化はレシーブ力の向上も生み出しました。ラケットの「高反発」「軽量化」「ロング化」「スィートエリアの拡大」はかつて以上に操作性を高め、「コンパクト」なストロークを実現させました。このことが厳しい状況に追い込まれてもレシーブ可能なデフェンスを生み、ラリー数の増加、試合時間の伸び等につながっています。

 

続いてAとBを見てみましょう。Aシューズの改善、Bコート・サーフェスの改善はフットワーク(移動面)での改善を主として生みだしています。改善として出ているのは「高速化」と「安定化」です。

 

移動技術として最近特に目立つのは、シャッセの多用です。ハードアタックが展開の中に増加するに連れ、小さなステップでより素速く移動する必要性が出てきました。この事がシャッセの多用を生み出しています。また、このシャッセに加えて、状況に応じてクロスオーバーやクロスビハインドステップ等を取り入れた移動力が要求されています。

このときに上体をできるだけぶらさず、胸を張って安定化を図る技術も出現しています。詰まるところ、各局面や状況に応じたステップの採用を瞬時に決め、安定して移動を実行できる高いコオーディネーション能力が必要とされています。デンマークのPeter Gade-Christensenはその好例です。

細かな技術としては、軸となる足底部をプレイヤー自信の上体に対し内側に向け(足の回内位)、後方への移動スピードをより速く確保しようとする局面が最近多く出現してます。これは、フォアコート、ミッドコートで見られます。代表例としては、前述のインドネシアTaufik Hidayat中国Bao Chunlai,Lin Dan、マレーシアHafis Hashimなどです。

 

また、シューズのソール素材改善はジャンプ時の衝撃吸収を向上させ、プレイヤーの疲労蓄積の軽減にもつながっています。女子のおいては、足底部での赤血球破壊の軽減により貧血症状の防止につながっている可能性もあります。

 

コート・サーフェスについて見てみましょう。最近の国際トーナメントは大半がコートマットで行われています。このことは、すでに上記で見てきた移動等に生じる改善につながっていると思われます。

以上のことを総合しますと、A、Bの要素はラリー数の増加や試合時間の伸びに少なからず影響を与えていると言えるでしょう。